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2011/5/24 公開
 

平成21年度富士総合火力演習

平成21年度富士総合火力演習

ちょっと文が長いけどまずは説明〜

富士総合火力演習とは?
 陸上自衛隊が1961年から富士学校の生徒に火力戦闘とはどのようなものであるかを教えるために行っている実弾を使った陸・空合同の総合演習で、毎年8月下旬に静岡県御殿場市の東富士演習場畑岡地区で行われる、国内最大の演習展示。 略して総火演とも呼ばれる。 1966年からは国民にも一般公開されるようになり、多数の観客を招いて盛大に行われている。 陸上自衛隊の錬度の向上、総合火力戦闘様式の認識、そして国民に対する理解の向上を目的としており、また米軍をはじめ各国武官なども招待され国内外に自衛隊を知らしめる良い機会でもある。
 期間としては7月から準備に入り、8月を通じて行われ、下旬に隊員家族や関係者、一般人を招いて演習展示を行う。 基本的には富士駐屯地及び周辺駐屯地に駐留する富士教導団が主体となって行うが、他所からの研修部隊なども参加する事がある。 一般に公開されるのは8月末に行われる1日のみで、6月から7月にかけて往復ハガキ、インターネットにより応募を受け付けるが、ある意味他では体験できない国内最大級のエンターテイメントでもある為、老若男女を問わず応募が殺到し、当選倍率は数十倍〜100倍を超えるなど非常に高いものとなっていて誰でも気軽に見学できるわけではない。
 一般公開日以外には隊員家族、関係者を招いて行う団家族の日などがあり、この日に行く事ができれば一般非公開の各教導隊野営地や夜間演習などを見れる事もある。

応募
 基本的に6月下旬頃から
陸自HP募集が告知されるので、応募要領に従って応募する事になる。 応募期間は6月下旬から7月上旬ぐらいまで。 応募は往復はがき、又はインターネット応募により行う。 あまりに応募総数が多い為か、22年度は1人1枚という規制が行われた。 当選券1枚で4名まで見学することができる
 応募は種類があり、29歳以下を対象とした青年券とそれ以外の一般券に分かれ、さらに駐車場付の駐車券と駐車場無しの電車券に分かれるので計4種類となる。 電車券はともかく車で来場する為に必要な駐車券の倍率はすさまじいものがあり、平成21年度はハガキによる応募総数が9万3919通、インターネット応募総数は5万2845通、合計で14万6764通となっており、全平均倍率が28倍、そして駐車券付きでなんと209.5倍というとんでもない倍率になったそうである。 ただし、前記の通り22年度は1人1枚の規制が行われている点に注意。 23年度以降がどうなるかは発表を待たねばならない。
 自衛隊の演習と言うとその筋の人ばかりかと思ったら大間違い。 1度知ってしまうとヤミツキになるのは男も女も変わりなく、一般の人々が大挙して応募するのである。 発砲や爆発による熱気を帯びた衝撃波などを体験できるのは総火演くらいであり、普通に生きてたら死ぬまで体験できないものが体験できるとあって年々倍率は跳ね上がっていく事となった。 これは別に総火演に限った事ではなく、駐屯地祭や米軍のフレンドシップデーなどでも普段は特に軍事関連に関心や係わりのない一般の人々が男も女も関係なく来場する。 主催側としては市民が訪れてくれるのは広報的にありがたい事なので良い傾向であると言えるだろう。 稀に入り口付近でシュプレヒコールをあげる自称市民団体さんがいるが、来場者は彼らを無視して楽しそうに基地に入っていく。
 応募が締め切られた後から抽選が行われ、7月下旬から8月上旬頃までに返信が帰ってくる。 前述の通り、1通の当選券で4名まで入場する事ができるようになっており、入場の際に当選ハガキを参加人数分の入場チケットと交換して入場する

用意するもの
 当選したら当選ハガキ(または当選券)を持って当日東富士演習場まで電車もしくは車等で向かう。
 富士の天気は急速に変わるので雨具は必ず用意しなければならない。 事前に晴れの予報だったから大丈夫などと安易に考えると後悔する事になる。 車で行くなら念の為に着替えやバスタオルなども用意していくのがベター。 傘は開始前までは使用できるが、開始直前から完全使用禁止となるので、雨合
羽は必須となる。 早朝はかなり冷え込むので、寒い場合は防寒具にもなってくれてありがたい。 雨が降ってくると座席も濡れてしまうし、事前の雨で座席が濡れたり汚れたりしている事も多いが、こんな時は邪魔でなければ座れる大きさのスノコなどがあると濡れずにすむし非常に助かる。 長時間座っているとやはりお尻がかなり痛くなってくるので座布団かクッションも用意したい。 折りたたみ椅子などは後ろの人の邪魔となるので使用禁止。 他にはビニール袋も複数用意しておくと、雨が降ってきた際に荷物や座布団などを入れる事ができるし、大型のゴミ袋はシート代わりにもなる。 終わった後はゴミをまとめて持ち帰るのにも役立つので1パック用意しておこう。 雨や泥で汚れた衣服や靴を入れるのにも必要である。
 靴はスニーカーなど歩きやすく、雨や泥で汚れてもいいものを選ぶ。 女性はヒールなどではとても歩けないので注意。 帰りのバス乗り場や駐車場は舗装されておらず、雨でぐっちゃぐちゃのひどい泥濘になる場合がある。 雨が降ると予測される時には長靴を用意しておくといい。

 晴れた場合には今度は日焼け対策が必要になってくる。 富士の晴れた日の日差しはかなり強い。 日傘は当然使えないので、なるべくなら半袖だけではなく長袖も用意し、帽子と日焼け止めも用意しよう。 対策を用意してないと背中から強い日差しにジリジリ焼かれて帰りにはロブスターのようになる事になる。 特に首の後ろは焼かれるのでタオルをかけるようにしよう。 つばが全面に広くある麦藁帽子が一番いいが、残念ながら後ろの人の視界の邪魔となる恐れが過分にあるのでご注意。 日差しを避けようとしてアルミ蒸着の断熱ブランケットを使用しようとした人もいたが、当然の事ながら後ろの人に太陽光を反射して怒られていた。
 あとは食事。 現地の売店で買ってもいいが、早朝はまだ開いてない。 早朝から行く人は用意していこう。 売店もそうそう売り切れることはないが、種類が豊富なわけでもないので好きな弁当を持って行っておくといい。 始まるまではかなりヒマなのでお菓子等もあるといいかもしれない。

 傘富士 傘富士
  車で向かう途中に撮った傘富士。 なかなか見れない良い風景だが、これが出ると
  数時間後には雨になるという。 事実、雨になった…。 (8/23撮影)

演習場まで
 幸運にも駐車券が当たった場合は車・バイク等で指定された駐車場へ行って駐車する。 駐車場は複数あるが返信ハガキにどこの駐車場か指定されてあるのでよく確認する事。 駐車場からは演習場までの往復シャトルバスが間断なく運行されているのでそれに乗って演習場に向かう事になる。 ただし、早朝にはまだ運行しておらず、早く着きすぎると待たねばならなくなるが、待てずに徒歩で演習場へ向かう人もいる。 その場合は距離にして2km前後の坂道を登って行かねばならない。

 電車券の場合はJR御殿場線御殿場駅で降り、バスまたはタクシー等で演習場へ向かう。 御殿場線の始発は遅いのでよく時刻表でチェックし、路線サイトなどで乗り換えを確かめておこう。 例えば東京方面からだと国府津(こうず)で御殿場線に乗り換えるが、国府津の始発は5:57であるので、御殿場到着はどうやっても7:00となる。 これは途中の新松田→松田と乗り換えても変わらない。 余談だが御殿場線は渓谷などの中を走る部分もあり、景色の良い所がある。 国府津方面から乗るのであれば進行方向向かって右手を見ていると良い。
 なお、小田急小田原線を使うと新松田駅→松田駅と乗り換える事になるが、松田の乗り換えは時間がシビアである場合がある。 新松田駅から50mほどを歩いて松田駅へ移動し切符を買って乗らなければならないが、改札からホームまではまた100mほど距離がある。 松田から御殿場までは480円なので用意しておこう。 万が一遅れたりすると待ち時間が厳しい事になるので注意。 始発は6:18だが、これに乗り遅れると次は6:58まで30分も待たねばならなくなる。 新宿から始発に乗ると松田6:58発に乗り換える事になるが、乗り換え猶予時間はわずか4分しかない。 出遅れて松田駅の券売機で順番待ち、なんて事になると悲惨である。 ただローカル線の温かさ、穏やかさというのか、走ってくる人がいれば発車せずに待っていてくれたりはする。 走れないおばあさんが乗るのを待って1分以上遅れて発車した事もある。

 バスは片道550円程度、タクシーで4000円前後。 (※私は当日にバスやタクシーで演習場へ行った事が無いのではっきりした事は書けません。 あらかじめご了承下さい) 到着時刻が遅くなってくると時間帯によってはかなり混雑、待つ事になるおそれも。 タクシーは渋滞や迂回で金額が一定しないので注意。 1人で行く場合は可能であればバス乗り場などで声をかけて相乗りを2名ほど募集してみると良い。 1人で乗るにはタクシーは高いが2名になれば半額(2千円前後)、3名なら1/3(1500円前後)の金額になる。 その場合は同乗者への分担のお釣りを小銭で用意しておくべき。 また、予想金額と分担額をきちんと説明してから乗ろう。 乗る前に運転手に予想金額を聞いておけば安心できるかもしれない。 問題なく行く事ができれば3000円程のはず。 ただし、行きはよいよい帰りは怖い。 行きはともかく終了後の市内の大渋滞は半端ではなく、場合によっては4千円を超えるかもしれないのでよく検討する事。
(※羊経験談:富士学校祭の行きに駅前バス乗り場で相乗りを募集、1名応じて2名で乗り、途中で渋滞を迂回した為3500円程。 2人で割って1800円くらい。 帰りに3名で相乗りした際は市内の大渋滞に巻き込まれ、4300円ほどに。 3名で割って1500円ほど)

入場
 一般公開される富士総合火力演習は早朝6時ごろから入場受付を開始し、入り口でチケットと交換して入る。 その際に新聞大の大きなプログラム・パンフレットをもらえる。 チケットは売店で買い物したりトイレなどに行ってから再入場する際に必ず必要となるので常に各人が携帯しておく事。 落とさないように。
 以前は早い者勝ちで会場に入れたが、近年は規制されて入れなくなっている。 入って荷物を置いて陣取っていても開場前に撤去される。 ちゃんと並んで待とう。 なお、チケットに青とか黄色とかが記載してある。 それに合わせた入場を行わなければならない。
 見学席は大きく分けて前方のシート席と後方の雛壇とに分かれる。 シート席は最前列を取れればもう最高だが、とれずに後ろに下がってくると高低差があまりないので見えなくなってしまう。 その際は後方の雛壇に行った方がいい。 こちらは遠くなるがその分高い位置ほど会場全体を見渡す事ができて見晴らしがいい。 双眼鏡などがあればベター。
 座る場所はなるべく詰めて座る。 広々と場所を取っていると、後から来た人に入られてしまうので意味が無い。 空間があると係りの隊員に強制的に詰められる場合もあるが従う事。 なお、後から来た人が座れないからと雛壇の通路にまで座るようになるが、非常に危険なので禁止となっている。  雛壇では足元が開いているので荷物の落下に注意。 特にカメラのキャップ、帽子、ペットボトルなどが落下しやすい。 三脚は使ってもいいが周りの人の迷惑とならない程度に。 どっちにせよがっしりした大きな三脚は使えないので使うなら中くらいの三脚を用意すると良い。 トイレなどに行く人に誤って倒される可能性があるので、出かける時は畳んだりしておいた方がいい。 カメラの高さは自分の頭の高さまで。 間違っても手を上に伸ばして撮影しようなどとしない事。

 場内は禁煙。 タバコはいったん場外へ出て喫煙所で吸う事になる。 トイレなども場外に用意してあるが、演習開始前と終了直後は並ぶ事になるので早いうちに済ませておこう。 トイレにあまり行かないようにする為にはなるべくなら飲食は避けるべきではあるが、しかし脱水症状や貧血になる恐れもあるので状況に合わせて無理はしないように。 せっかく高倍率に当選して現地まで行ったのに体調不良を起こしたのでは目も当てられない。 暑くなって汗をかき始めたらスポーツドリンクなどをちゃんと補給する事。 日差しが強くなって汗をかきまくっている時はお茶や水だと塩分不足になる可能性がある。
 売店もかなり混むのでお土産や弁当、飲み物などは早いうちに買っておこう。 落し物に注意する。 チケットを落としたりしたら入れなくなってしまう

演習開始
 マナーを守って騒いだりしない事。 戦車の発砲音はかなり強烈であるので、耳が痛くなるようであればティッシュをちぎって丸めて耳栓にしよう。 だいぶ緩和される。 特に小さな子供は強烈な爆音、衝撃波に驚いて泣き出す場合があるので要注意。 小学校に入る前の子供、乳幼児を連れて行くのは避けた方がいい。 子供が泣き出したらもう見学はそこで終わり。 周りの迷惑を考えて退場しなければならなくなる。 雷を怖がるようであればまず無理だと思った方が良い。
 先述の通り、傘、タバコ、椅子、その他周りの迷惑となる行為は全て禁止となっている。 飲酒は禁止されてないが、酔って周りに迷惑かけたり騒ぐような事の無いように。 悪質な場合は警備の隊員に退場させられる場合もある。 節度を持って総火演を楽しもう。 なお、近年はシート最前列を取れても前方には危険防止のトラ模様のロープと杭が2重くらいに張られている為、撮影には良い条件とは言えない事に注意。 シート席右側前列は前方の射撃用土手が邪魔になって会場がよく見えない場合がある。

 プログラムは来賓や富士学校長、防衛大臣などの入場と挨拶や訓示、前段演習と後段演習、そして装備品展示に分かれる。 前段演習は10時ごろから、各部隊、装備品の解説などを交えて設定された目標に対して順番に実弾射撃を行う。 音楽隊の演奏などがあり、後段演習は昼から、それぞれの火力、機動を交えた実戦的な総合演習をとり行う。 両演習終了後、演習場にて各種装備品展示が行われる。 なお、早朝6時前後には照準の調整、不具合がないかなどを目的とした各部隊による点検射が行われるが、見れるかどうかは入場規制次第。 毎回違うのでどんな態勢となっているかは行ってみなければ判らない。
 ヘリの風圧、発砲の爆風などにより、砂や小石が吹き飛ばされてくる場合があるのでシート席前の方に座った人は注意しておこう。
 前段演習が終わるとしばらく休憩時間があるが、前述の通りトイレは混むので早く行こう。 喫煙もこの間に。
 車上に緑か赤の旗が立っており、緑旗は実弾未装填/安全赤旗は実弾装填/発砲準備を意味する。 夜間演習の場合はそれぞれ緑と赤のライトで表示される。 榴弾砲や迫撃砲などの火砲においても同じである。

 なお、天候の状態により、演習が中断されたり、部隊が発砲しなかったりする場合がある。 場所が場所だけに天候の急変悪化、特に雨はともかく濃霧が発生したりすると最悪で、目標が見えなくなって部隊は射撃できなくなる。 出てはくるものの、射撃命令後に目標確認できずを応答して撃たずに退場してしまう。 目玉の戦車が発砲しなかったりするとこれはもう無念というより他ないが、こればっかりは文句を言えない。 運が悪かったとあきらめるしかない。 また、稀に機器や車輌故障などで動かなくなったり発砲しなかったりする場合もある。 一生懸命に整備しても壊れる時は壊れてしまう。 大型機械というのはそういうものであり、これも仕方がない。

演習終了
 全部隊の突撃をもって演習は終了し、ラッパが高らかに吹かれる。 盛大な拍手を送ろう。 しばらく待つと各演習参加部隊の退場が始まるが、部隊はたいてい観客に手を振りながら部隊ごとに右側へ退場していくので手を振って見送ろう(ただし、周囲や後ろで撮影してる人に注意)。 運がいいと、戦教第2中隊(富士教導団戦車教導隊第2中隊。略して戦教2中などと言ったりする)は観客席前で整列後、90式戦車の姿勢制御によって観客にぺこりと挨拶をしてくれたりする。 最後の見所なので見逃さないように。
 演習が終わると音楽隊の演奏やビデオ上映があったりした後で、演習場整備後に戦車や榴弾砲、ヘリなどの装備品展示が行われる。 渋滞を避ける為に急いで帰ろうとする人も多いが、急ぐのでなければじっくり装備品展示を見ていこう。 逆に遠方から来ている場合はここで速攻帰るようにしなければならなくなる。 忘れ物に注意して、ゴミなど散らかしたままにせず持って行こう。 一応場外にゴミ捨て場も用意されているが、なるべくならゴミは持ち帰って欲しい。 マニアであれば、「ここは俺の庭!」ぐらいに思って自分の周囲だけでいいからボランティアでゴミ袋片手に散らかったゴミの片付けなどを行ってもらえると嬉しい。 マナーマナーと言っても仕方がないが、終わった後のパンフや弁当容器の散乱放置状況は悲しいものが…。 あれだけ良いものを見せてくれたのにゴミ散らかしたまま帰るの?と思ってしまう。

 バス乗り場までは施設隊が架けた橋を渡らなければならないが、一気に渡らせると階段での転落事故などがあるのである程度の集団ごとに区切って通行規制が行われている。 焦って押し合ったりしないように。 バス乗り場は悪天候の時は泥濘状態となってぬかるんでいるから転倒に注意。
 自衛隊も帰る人たちの為に周辺からバスをありったけかき集めて投入しているものの、なにしろ万単位の客を運ばなければならない。 どうしても大行列になるのは仕方が無い。 係員の指示に従って整然と待って欲しい。 帰りは行き先によって乗り場が違うのでよく確かめる事。 歩いて駐車場へ向かう場合は歩道など無いので行き来する車やバスによく注意して歩いて欲しい。 やっと駐車場に辿り着いても今度はそこから出るのに時間がかかるし、御殿場近辺は迂回路も無いので大渋滞する事になる。 トイレは必ず済ませて、飲み物も用意して乗ろう。
 家に帰るまでが総火演。 安全運転で!
 
それでは、演習内容へ

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