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1938年から、A13軽巡航戦車シリーズを支援する重巡航戦車(基本装甲厚30mm)の開発が始まった。 それが、A14巡航戦車とA15(後のA16)巡航戦車である。 後に、A14巡航戦車の開発は中止されている。 開発期間短縮の要請から、新規のA16巡航戦車計画などは提案できず、当時計画中であったカヴェナンター巡航戦車(A13Mk.III)の拡大型というべき新A15巡航戦車で対応することと決した。 新A15巡航戦車は、車体と砲塔をカヴェナンター巡航戦車から、エンジン等の機構部分はMk.IV巡航戦車から採り入れた。 カヴェナンター巡航戦車の開発が進められている最中に、同じような性能の車両の開発が決定されたのは、カヴェナンター巡航戦車の装備するメドウズ社製のMAT 水平対向12気筒液冷ガソリン・エンジンの性能に不安があったためで、いわばA15巡航戦車は、カヴェナンター巡航戦車の「保険」であった。 結果的にはこの措置は正解で、カヴェナンター巡航戦車は続出するトラブルのために直接戦力にはなり得ず、A15巡航戦車に主役の座が回ってくることになる。 A15巡航戦車の開発は順調に進み、2両製作された試作車の内、最初の1両であるA15E1が完成したのは1939年7月のことで、試験はすぐに開始されている。 この時期には、先に開発がスタートしたはずのカヴェナンター巡航戦車は、未だに試作車さえ完成しておらず、その前途を予兆させるような両車のスタートであった。 A15巡航戦車は、部品の多くがA13巡航戦車シリーズと共通である。 車体前面の装甲厚は40mmとなり、操縦手席隣の車体左側には、参謀本部の強い要望で、7.92mmベサ重機関銃を装備する小円筒型銃塔が新設された。 エンジンには、メドウズ社製のMATガソリン・エンジンの代わりに、ナフィールド社が当時生産していたリバティ V型12気筒液冷ガソリン・エンジン(出力340hp)を採用した。 そのため、車体が約30cm伸びて、転輪が片側4個から5個に増えた。 武装は、52口径2ポンド戦車砲1門と7.92mmベサ重機関銃が2挺、それに、対空用に7.7mmブレン軽機関銃1挺が装備された。 車体前部の銃塔は、部隊での評判が悪く、実戦では撤去される例が多かった。 クルセイダーMk.II巡航戦車では、車体前面の装甲厚を40mmから49mmに増加する際に、初めから撤去されている。 A15巡航戦車の試験は順調に進んでいたが、一刻も早く戦力を強化したい当局は、試作車の完成以前である1939年6月27日には、ナフィールド社に対してすでに200両の量産命令を出している。 さらに1940年3月7日には、系列会社であるウエストガス・インプルーブメント社とフォーデン社に対しても、それぞれ100両ずつの量産命令が出されており、これは後に150両に引き上げられた。 本社であるナフィールド社の方は、200両の量産命令の後に301両の追加発注を受けており、結局、9つの系列会社の工場をフル操業させて、1943年の生産終了までに5,300両のA15巡航戦車シリーズが生産されている。 最初の量産車が工場のゲートから送り出されたのは、1940年5月のことであった。 A15巡航戦車は、1940年末にはMk.VI巡航戦車として制式化され、「クルセイダー(Crusader:十字軍戦士)」の愛称が与えられている。 クルセイダー巡航戦車は、高速性能と優れたサスペンションが売り物であったが、機械的信頼性は決して高くはなかった。 初めて実戦で使われたのは1941年6月のバトル・アクス作戦であったが、投入された内の約半数は、機械的トラブルが原因で失われるという有様であった。 さらに、火力、装甲共にドイツ軍戦車には見劣りがした。 欠点はあったものの、それまでの旧式巡航戦車に比べれば機動性は群を抜いており、イギリス陸軍第7機甲師団の主力戦車として活躍している。 実戦経験に基づいて火力も増強され、1942年11月のエル・アラメイン戦では、初めて6ポンド戦車砲装備車が投入されている。 なお、北アフリカ戦以後は第一線から退き、ヨーロッパ侵攻作戦では、対空戦車または17ポンド砲装甲牽引車として使われた。 第2次世界大戦前半のイギリス軍の主力戦車であるだけに、クルセイダー巡航戦車にはヴァリエーションも多い。 1940年半ばからは、ドイツ軍のIII号戦車の5cm戦車砲に対処するために、追加鋼板によって車体前面の装甲厚を49mmに増し、銃塔は撤去したクルセイダーMk.II巡航戦車の生産が開始された。 1942年5月に登場したクルセイダーMk.III巡航戦車では、車体前面の装甲厚が51mmとなり、主砲は2ポンド戦車砲から6ポンド戦車砲に換装された。 6ポンド戦車砲の搭載にあたっては、元々がコンパクトに設計された砲塔であったために、砲塔内の乗員は2名となり、操縦手と合わせて乗員3名の戦車になってしまった。 そのため、実質的な戦闘力は低下している。 なお、これ以外にも、3インチ榴弾砲を搭載したCS(Close Support:近接支援)タイプも生産されている。 クルセイダー巡航戦車は、良く言えば、イギリス軍の大戦前半の主力戦車であるが、実際には、マティルダII歩兵戦車と共に北アフリカ戦専用の戦車であった。 1942年以降、アメリカ製のM4中戦車が配備されると、第一線からは姿を消した。 |
<クルセイダーMk.I巡航戦車> 全長: 5.98m 全幅: 2.77m 全高: 2.24m 全備重量: 19.255t 乗員: 5名 エンジン: ナフィールド・リバティ V型12気筒液冷ガソリン 最大出力: 340hp/1,500rpm 最大速度: 44.26km/h 航続距離: 161km 武装: 52口径2ポンド戦車砲×1 (110発) 7.92mmベサ重機関銃×2 (5,000発) 7.7mmブレン軽機関銃×1 (600発) 装甲厚: 7〜40mm |
<クルセイダーMk.II巡航戦車> 全長: 5.98m 全幅: 2.77m 全高: 2.24m 全備重量: 19.255t 乗員: 4名 エンジン: ナフィールド・リバティ V型12気筒液冷ガソリン 最大出力: 340hp/1,500rpm 最大速度: 44.26km/h 航続距離: 161km 武装: 52口径2ポンド戦車砲×1 (110発) 7.92mmベサ重機関銃×1 (5,000発) 装甲厚: 7〜49mm |
<クルセイダーMk.III巡航戦車> 全長: 6.31m 車体長: 5.98m 全幅: 2.77m 全高: 2.24m 全備重量: 20.067t 乗員: 3名 エンジン: ナフィールド・リバティ V型12気筒液冷ガソリン 最大出力: 340hp/1,500rpm 最大速度: 44.26km/h 航続距離: 161km 武装: 43口径6ポンド戦車砲×1 (65発) 7.92mmベサ重機関銃×1 (3,755発) 装甲厚: 7〜51mm |
<参考文献> ・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画 ・「PANZER2005年11月号 クルセイダー巡航戦車」 白石光 著 アルゴノート社 ・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」 デルタ出版 ・「第2次大戦 イギリス・アメリカ軍戦車」 デルタ出版 ・「戦車名鑑 1939〜45」 コーエー |