7.5cm対戦車自走砲マルダーI





1940年6月21日のフランスの降伏により、多くの戦車や装甲車両を労せずして入手したドイツ軍は、これらをそのまま自軍の装備として使用すると共に、各種自走砲のベース車台としても多用した。
その中の1つが、万能装軌式牽引車ロレーヌ・シュレッパーから改造された、この7.5cm対戦車自走砲マルダーIである。

ロレーヌ・シュレッパー装軌式牽引車は、1937年から1940年5月までに387両が生産され、ドイツ軍は、300両を自軍の装備として用いたが、本車は、車体中央部に機関室を配し、その前方に操縦室、後方に荷台というレイアウトを採っており、自走砲の母体とするには、大きな改造を施すこと無くそのまま転用することができるというメリットを備えていた。

ドイツ軍は、捕獲したロレーヌ・シュレッパーを、フランス軍と同様に火砲の牽引や後方部隊の訓練用に用いていたが、慢性的な対戦車車両不足に悩むドイツ軍がこのメリットを見逃すはずはなく、1942年5月に、46口径7.5cm対戦車砲PaK40を搭載する対戦車自走砲への改造要求が出された。
この背景には、ソ連侵攻において遭遇した強力なT-34中戦車を撃破するには、最低でも7.5cm対戦車砲が必要であるという判断があったことはいうまでも無い。

開発は、ベルリンのアルケット社とフランスのアルフレッド・ベッカー社の手で行われることとされたが、アルケット社が基本設計を行い、アルフレッド・ベッカー社が実際の改造作業を担当する形で進められた。
当初60両が発注されたが、1942年6月に24両が追加され、その後も追加発注が行われて、最終的には、300両を全てマルダーI対戦車自走砲に改造する予定が立てられたものの、結局、改造数は170両に留まった。

マルダーI対戦車自走砲への改造にあたって、ロレーヌ・シュレッパーの車体後部の荷台部分には箱型の台座が設けられ、ここに7.5cm対戦車砲PaK40/1が限定旋回式に搭載されたが、防盾は、戦闘室に合わせて新たに設計されたものが装着された。
元々、ロレーヌ・シュレッパーの車体幅が狭いこともあり、戦闘室は、車体側面から外側に張り出しを設け、この張り出しの上に箱型の戦闘室を設けており、他の多くの自走砲と同様に、上部はオープン・トップとなっていた。

また、戦闘室の前面は砲の防盾とヒンジで結合されており、砲を左右に旋回させても前面に隙間が生じないよう考慮されていた。
7.5cm対戦車砲PaK40/1の旋回角は左右各32度ずつで、俯仰角は−5〜+22度となっていた。
完成したマルダーI対戦車自走砲は、他のフランス軍車両をベースとした自走砲と同じく、フランスに展開した部隊に配備されたが、一部の車両は東部戦線に送られて、ソ連軍戦車との戦闘に投入されている。


<7.5cm対戦車自走砲マルダーI>

全長:    5.31m
全幅:    1.83m
全高:    2.23m
全備重量: 8.49t
乗員:    5名
エンジン:  DelaHaye 103TT 直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 70hp/2,800rpm
最大速度: 34km/h
航続距離: 135km
武装:    46口径7.5cm対戦車砲PaK40/1×1
        7.92mm機関銃MG34×1
装甲厚:   5〜12mm


<参考文献>

・「世界の軍用車両(1) 装軌式自走砲:1917〜1945」  デルタ出版
・「異形戦車ものしり大百科」 斎木伸生 著  光人社
・「図解・ドイツ装甲師団」 高貫布士 著  並木書房


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