レオパルト2A5戦車





ドイツ陸軍は、レオパルト2戦車の後継車として、Pzkw.2000と呼ばれる新型主力戦車の開発を行っていたが、その中止に伴い、既存のレオパルト2戦車の改良計画が浮上した。
それが、KWS(Kampfwertsteigerung=戦闘能力向上)と呼ばれる2段階のアップ・グレード計画である。
KWS-Iは、戦闘力の向上を目指したもので、従来の44口径120mm滑腔砲に代えて、55口径120mm滑腔砲を搭載するというものである。

これに対してKWS-IIは、主に装甲防御力の向上に重点が置かれた改良計画で、特に、砲塔前面の装甲を強化することが主眼となっている。
面白いのは、KWS-IよりもKWS-IIの方が先に着手されたことである。
技術的な問題が生じたのか、政治的な配慮かは不明だが、見方によれば、装甲防御力の向上が急務だったためにこうなった可能性もある。

この改良計画の要請を受けたクラウス・マッファイ社は、1990年代前半に、TVM-Iと呼ばれる試作車を2両完成させた。
この車両は、本格的な試作車ではなく、コンセプトも固まっていない試作車だったらしい。
砲塔前面の追加装甲も、単なる木型で作られていた。
この、砲塔前面の追加装甲は楔形で、前に鋭く突き出した独特な形状をしていた。

本格的な試作車ではないとはいえ、この形状は、完成型にもそのまま採用されていたことからすると、この段階で、砲塔前面の装甲についてはほぼ固まっていたと思われる。
このTVM-Iは、1993年に行われた、スウェーデン陸軍の次期MBT採用のための評価試験に参加し、アメリカのM1エイブラムズ戦車とフランスのルクレール戦車を抑えて勝利を収めた。

次に製作されたTVM-IIは、本格的な試作車であり、ドイツ陸軍とスウェーデン陸軍に採用されたのは、このTVM-IIを基本としたものである。
TVM-Iでは、砲塔前部側面には付加装甲が装着されていなかったが、TVM-IIでは、この部分にも装甲が装着されるようになった。

TVM-IIの評価試験に満足したドイツ政府は、1994年1月にクラウス・マッファイ社との間で、既存のレオパルト2戦車をA5型に改修する契約を取り交わした。
そして砲塔は、カッセルのヴェクマン社が改良を行うこととされ、車体と砲塔の統合は、クラウス・マッファイ社が担当することになった。

1995年、クラウス・マッファイ社は、16両のレオパルト2A5戦車をドイツ陸軍に引き渡し、以後、1996年1月から、月6両のペースで改修が実施されていったのである。
こうして部隊配備が行われたレオパルト2A5戦車だが、改修車両であるため、基本的なレイアウトに大きな変更は無い。
以下に、主な変更点を挙げる。

まず砲塔前面には、ショト装甲(Schott panzerung=隔壁装甲)と呼ばれる、大きな楔形の付加装甲ボックスが装着されている。
クラウス・マッファイ社によれば、これには、既存のあらゆる化学・運動エネルギー弾に対する防御力があるという。

以前は、この楔形の装甲ボックスの内部には、何枚もの傾斜した装甲プレートが隔壁のように配置されているといわれ、この隔壁により、命中したHEAT(対戦車榴弾)、ミサイル、徹甲弾の放つ超高速のジェット噴流や高速弾を阻止するようになっていると考えられていた。
しかし最近になって、この装甲ボックスの内部は中空で、縦方向の仕切り板が傾斜を付けて2枚挿入されていることが判明している。

この装甲ボックスにAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)が命中した場合、APFSDSの侵徹体が装甲に対して垂直に侵入しようとする性質を利用して、装甲ボックスの楔形の傾斜と内部の仕切り板の傾斜により、侵徹体を内側の主装甲の最も強度が高い中央部に誘導すると共に、侵徹体に横方向のモーメントを連続してかけることにより破損させる効果がある。
また、HEATに対しては、通常の中空装甲と同様の防御効果を発揮する。

レオパルト2A5戦車ではこの他、砲塔の左右側面にも付加装甲が装着されている他、サイド・スカートにも複合装甲が採用されている。
さらに、防御力の向上という観点から見落とせないのは、砲塔内にスポール・ライナが張り巡らされたことである。
これによって、乗員への防護が高められたのはいうまでもない。

目立たないが、レオパルト2A5戦車では射撃統制装置(FCS)も改良されている。
新たに、車長用の全周旋回するPERI-17A2サイトが、砲塔右上に増設されたのである。
もちろん、熱線映像装置を内蔵しており、車長が目標を捜索し、砲手が、車長によって捕らえられた目標の射撃に専念する、ハンター(車長)・キラー(砲手)運用が全天候下で可能となった。

新型のCE628レーザ測遠機は高精度で、距離10km先の誤差は20m足らずである。
この高性能FCSによって、敵戦車や装甲車両のみならず、低空を低速飛行するヘリコプターも、高い確率で狙い撃ちできるようになったという。
また車長用には、ファイバ・ジャイロとGPS受信機を組み合わせたハイブリッド型の航法装置が導入されており、レオパルト2戦車の運用能力を総合的に向上させている。

このように近代化されたレオパルト2A5戦車は、2000年代においても、世界的に第一級のMBTとして十分に通用する性能を維持するために、他の欧州諸国からも注目を集め、1994年にはスウェーデン陸軍が、約300両のイギリス製センチュリアン中戦車の更新用に本車の採用を決め、翌95年には、スペイン陸軍も200両の採用を決定している。
また、オランダ陸軍とスイス陸軍では、既存のレオパルト2戦車のA5型への改修計画を進めている。


<レオパルト2A5戦車>

全長:    9.97m
車体長:   7.722m
全幅:    3.74m
全高:    2.64m
全備重量: 59.7t
乗員:    4名
エンジン:  MTU MB873Ka-501 4ストロークV型12気筒多燃料液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 1,500hp/2,600rpm
最大速度: 72km/h
航続距離: 500km
武装:    44口径120mm滑腔砲Rh120×1 (42発)
        7.62mm機関銃MG3×2 (4,750発)
装甲:    複合装甲


<参考文献>

・「PANZER2005年10月号 レオパルト2シリーズの最新バージョン レオパルト2A6」 城島健二 著  アルゴノー
 ト社
・「PANZER2000年2月号 最初の第3世代MBT レオパルト2」 小林直樹 著  アルゴノート社
・「PANZER2002年3月号 ドイツ第393戦車大隊のレオパルト2A5戦車」  アルゴノート社
・「グランドパワー2005年4月号 レオパルト2(3)」 一戸崇雄 著  ガリレオ出版
・「最新陸上兵器図鑑 21世紀兵器体系」  学習研究社
・「世界の最強陸上兵器 BEST100」  成美堂出版
・「世界の最新兵器カタログ 陸軍編」  三修社
・「世界の主力戦車カタログ」  三修社
・「ドイツ戦車発達史」 斎木伸生 著  光人社


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