チャレンジャー巡航戦車 (A30)





北アフリカ戦で、イギリス軍戦車の主砲の威力不足は決定的となり、巡航戦車の火力の増強が検討された。
車体にはA27クロムウェル巡航戦車のものが、主砲には、当時開発中であった17ポンド砲が選ばれた。
しかし、A27巡航戦車の車体は幅が狭く、そのままでは17ポンド砲の搭載は困難で、車体は再設計されることになった。
この新型巡航戦車A30の開発は、1942年5月にバーミンガム・レイルウェイキャリッジ社で開始された。

A27巡航戦車の車体を延長し、転輪を片側6個ずつに増加し、車体中央部の車体幅が拡大された。
砲塔は、TOGII重戦車の砲塔から増加装甲を外し、軽量化したものが搭載された。
1942年8月に、A30巡航戦車の試作車が完成した。
エンジンやサスペンション、その他機構的にはA27巡航戦車と同じであったため、重量増加分だけ機動性は低下し、駆動系の故障も多かった。

そこで装甲を薄くして、車体機関銃を撤去した改修車が1943年1月に完成した。
砲尾の巨大な17ポンド砲を無理して搭載したためにシルエットが高く、装甲は薄かった。
弾薬庫の装甲板も撤去された。
しかし当時、17ポンド砲を搭載し、すぐに生産が開始できる戦車はこれしか無かった。
クロムウェル巡航戦車と、部品の多くは共通であった。

本車の出現により、少なくとも火力だけは、ドイツ軍戦車に対抗できることになった。
車体機関銃は廃止され、そのスペースには弾薬庫が新設された。
当時、ドイツ軍では長砲身型IV号戦車やティーガー重戦車の配備が始まっており、17ポンド砲搭載戦車の実戦化は緊急を要し、問題はあるものの、A30巡航戦車は「チャレンジャー(Challenger:挑戦者)」の名称で制式採用となった。

チャレンジャー巡航戦車は当初200両が発注され、イギリス陸軍機甲師団の各戦車大隊に6両ずつ配備し、クロムウェル巡航戦車3両と本車1両で小隊を編成する計画であった。
チャレンジャー巡航戦車の最初の量産車は、1944年3月に完成した。
この戦車の開発と並行して、アメリカ製のシャーマン中戦車に17ポンド砲を搭載した、シャーマン・ファイアフライ中戦車の開発計画が進められていた。

この試作車の試験の結果は、チャレンジャー巡航戦車よりも明らかに優秀と認められたために、実戦部隊にはファイアフライ中戦車が配備されることになった。
チャレンジャー巡航戦車の方は、1944年8月から機甲偵察連隊に配備され、結局、活躍する場が与えられないままに終わった。


<チャレンジャー巡航戦車>

全長:    8.147m
全幅:    2.908m
全高:    2.775m
全備重量: 33.022t
乗員:    5名
エンジン:  ロウルズロイス・ミーティア 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 600hp/2,550rpm
最大速度: 51.5km/h
航続距離: 193km
武装:    58.3口径17ポンド戦車砲×1 (42発)
        7.62mm機関銃M1919A4×1
装甲厚:   10〜102mm


<参考文献>

・「世界の戦車 1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著  大日本絵画
・「PANZER1999年7月号 A30チャレンジャー巡航戦車」 白石光 著  アルゴノート社
・「第2次大戦 イギリス・アメリカ軍戦車」  デルタ出版
・「戦車名鑑 1939〜45」  コーエー


兵器諸元

BACK  HOME